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一瞬で!心をつかむ
売れるキャッチコピーの法則

序章

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1 キャッチコピーの正体に迫る!
お客さまの心をつかむのは、商品でしょうか。それとも、キャッチコピーでしょうか。商品を購入するときの状況を思い浮かべつつ、このテーマを考えてみましょう。
購入のトリガー(引き金)は何か?
携帯電話やテレビなどは、店頭で試用してみることができます。しかし、初回購入に限ってみれば、じゅうぶんな使用体験のないまま商品の選択をしなければならないのが一般的です。
映画を例にとってみましょう。
ロードショーの映画が10本上映中だとします。この中の1本を見るとしたら、あなたは、どのようにして映画を選びますか。
意識するかどうかは別として、あなたが持ち合わせているすべての情報を取捨選択しつつ、あなたにあった、いちばん「おもしろそうな」映画を選ぶのではないでしょうか。
このように、映画という商品選択に際して、あなたの決断を促したのは、商品そのものではなく情報です。あなたの心をつかんだ情報が、商品選択に決定的な役割を果たしたと言えます。
すべての商品情報を整理統合して、簡潔かつ魅力的に表現した言葉が、キャッチコピーです。ですから、多くのケースで、購買に際し「心をつかむのは、商品ではなくキャッチコピー」なのです。
とすると、キャッチコピーの役割は、何なのでしょうか。

キャッチコピーの最大の役割は、商品のよさを「可能な限り魅力的に伝える」ことです。

当たり前のようですが、この当たり前のことを効果的かつ効率的にしようとすると、とても一筋縄ではいかないのです。
初めて商品を購入するとき、お客さまは多かれ少なかれ、その商品に何らかの期待感を持っています。
購入してから、期待どおり魅力的な商品だと分かれば、お客さまはリピーター(愛用者)になってくれます。反対に、期待にそぐわない商品であれば、二度と買ってはくれないのです。
ですから、キャッチコピーがお客さまに、「大いなる期待感」を抱かせる必要があると同時に、商品にはその期待を裏切らない品質が要求されるのです。
ところで、大きな期待感を抱かせることができるキャッチコピーほど、売れるキャッチコピーであると断言できるのでしょうか。すでに評価が固まっている歴史的な名キャッチコピーでの成功事例で、この辺の事情を調べてみましょう。

2 シェア50%を超えた!
花王の洗剤アタック

さて、ここで、家庭の主婦を中心に、「大いなる期待感」を抱かせ、発売わずか数カ月で50%を超えるシェア(市場占有率)を奪い取った商品を紹介します。花王の衣料用洗剤〈アタック〉です。
〈アタック〉開発秘話
スプーン1杯で驚きの白さに
1987年春、アタック新発売時のキャッチコピーです。商品パッケージや広告を含め、すべてのコミュニケーションツールにこのキャッチコピーが使われました。
アタックが発売されるまで、衣料用洗剤と言えば、自転車のカゴに2つも入れたら、他の荷物を入れる余地がないほど大きなものでした。それが、洗剤粉末を圧縮する技術が開発され、数分の一のサイズに小型化することが可能になったのです。
アタック開発の最大のポイントは、粉体圧縮技術と、卓越した洗浄力です。
花王の主任研究員だったM氏は、「洗っても洗っても残ってしまう黒ずみや黄ばみ汚れ」を落とす画期的なアイディアを思いついたのです。
家庭で洗濯する機会の多いセンイが、木綿です。木綿センイのいちばん小さな単位を単センイと呼びます。単センイが絡まったすきまに、微細な汚れが入り込むと、取り出すことが難しくなってしまうのです。汚れが落とせなくなってしまう原因です。そこで、M氏は、大胆な発想に思い至ったのです。
黒ずみ汚れを取り囲んでいる単センイを、ちょっとだけ切ってしまう。と、そのすきまから、汚れを取り出すことができるのではないか。
この発想を実現させるものとして、単センイを切ることができ、しかもほとんど衣類をいためない酵素、バイオセルラーゼを発見することができたのです。最初の発想から酵素の発見まで十数年の月日が流れていました。
商品力を後押ししたキャッチコピー
バイオセルラーゼを配合した洗剤は、驚くほどの洗浄力を発揮することが分かりました。まさに「驚きの白さ」の実現が可能になったのです。
スプーン1杯で驚きの白さに
このキャッチコピーを調査した時、私はモニタールームで調査対象者の生の声を聞いていました。ある主婦から漏れた言葉が忘れられません。

「こりゃ違うわ。いままでの洗剤と」

どんなに白さを訴求しても、どうせ広告だから、と軽く受け取られてしまうのが従来の洗剤の広告でありキャッチコピーでした。しかし、アタックのキャッチコピーは、「いままでと違う白さ」への大いなる期待感を抱かせるものだったのです。
それまで長い間、抜きつ抜かれつだった衣料用洗剤のシェア争いは、アタックの発売で一気に決着した形になりました。

3 ついに万年2位を返上!
アサヒスーパードライ

「イメージ訴求」で売れた時代
売れるキャッチコピーの正体を語るとき、忘れてはいけないのが、アサヒビールの〈アサヒスーパードライ〉です。
ご存知のように、ビール業界では、1980年代の中頃まで、キリン1社がダントツのシェアを抑え、長い間トップの座を独占していました。
私は花王の宣伝セクションに在席していた時代に、何度かキリンの宣伝部におじゃましたことがあります。そのおり、宣伝部の方が次のように話すのを聞いて、なんとも羨ましく思った記憶があります。

「シェアを下げないように、そうかと言って、上げ過ぎないように宣伝しなければならないので、大変気をつかいます」

ビールのような生活に密着した、しかも売上の大きな製品で市場占有率が高くなりすぎると、公正取引委員会が問題にする可能性があったのです。

さて、参考のために、ビール各社の歴史的なキャッチコピーを見てみましょう。
どういうわけか、キリンです
男は黙って、サッポロビール
マイペースで飲もう スタイニーでいこう
(アサヒビール)

これらのキャッチコピーには共通点があります。イメージ訴求です。
イメージ訴求とは、商品性能や品質とは直接関連のない感性的な要素をメッセージの中核に置いて、雰囲気やムード等の感性でお客さまをつかむ方法です。
ところで、ビール業界はなぜ、イメージ訴求での戦いを続けていたのでしょうか。
味や香りなどの品質より、ブランド自体のもつイメージが商品選択の重要部分を占めるとの認識があったからです。
つまり、お客さまは、品質ではなくイメージで商品を選ぶとの判断で、イメージ訴求を選んでいたのです。
「品質訴求」で切り込んだスーパードライ
さて、このような中に切り込んできたのが、〈アサヒスーパードライ〉です。花王の〈アタック〉新発売と同じ1987年のことでした。
飲むほどにDRY
辛口の生。
イメージ訴求とはまったく違って、理屈っぽいほどの品質訴求です。しかも、この短文の中に、アサヒスーパードライのよさが凝縮されています。

まず、アサヒスーパードライはなぜ旨いのか、とビールの品質を真正面から言い放っているのが新鮮です。他社がイメージ訴求に走っている中で、アサヒスーパードライだけが、「なぜ、どのように旨いのか」を力説する広告を大々的に流し始めたのです。

商品のよさを「可能な限り魅力的に」伝えることが、キャッチコピーの最大の役割である、と述べましたが、正にこの理論を地でいったキャンペーンだったのです。
商品のよさを伝える品質訴求に徹したため、お客さまは、アサヒスーパードライの味に対して、半信半疑ではありつつも、同時に「大いなる期待感」を抱き始めたのではないかと推測できます。

結果として、アサヒスーパードライは、発売1年目にして、フル生産でも間に合わないほどの大成功を収めたのです。1987年、日本経済新聞社のヒット商品番付で、東西の横綱となったのが、花王のアタックであり、アサヒスーパードライだったのです。

4 トイレの習慣を変えた!
TOTO・ウオッシュレット

長年つづけてきた習慣を変えるのは、それほど簡単ではありません。
生活習慣病というのがあって、罹患率が一向に減らない事実が、習慣を変えることの難しさを物語っています。人間は、いままでの習慣にしがみつく性質があるのです。

では、習慣を変えさせるために、するべきことはなんでしょうか。答えはひとつ、新しい習慣の提案です。その新しい習慣の魅力を、高らかにうたいあげるのです。
おしりだって、洗ってほしい。
現在では、新築家屋のほとんどすべてに使用されている、「洗浄便座」も、新発売の当初は、こんなキャッチコピーで売り出されたのです。
トイレでおしりを洗う、という習慣は、あっと言う間に日本全国の家屋を席巻してしまいました。
なぜでしょうか。
もちろん根源的には商品の性能が優れていたためですが、このキャッチコピーに続く次のボディコピーで、その理由がよく分かります。

「手が汚れたら、洗うでしょ。紙で拭く人っていないよね。どうして。紙じゃ、ホラ、とれないものね」

トイレの新しい習慣の利点を、このコピーほどよく表しているものはありません。だからこそ、「おしりだって、洗ってほしい」とのキャッチコピーが生きるのです。
つまり、売れるキャッチコピーには、必ずと言っていいほど、誰もが納得できる分かりやすさがあるのです。

5 小売店の歴史に革命を!
セブン・イレブン

コンビニの便利さは、いまでこそ当然のことのように語られていますが、日本で初めて創設された頃は、疑問だらけの小売り形態だったと言っても言い過ぎではありません。
スーパーマーケットの近くに店舗を構えながら、ほとんどすべての商品が定価販売。このひとつを取ってみても、小売業の常識を超えていたのです。

セブン・イレブンの創設者である鈴木敏文氏(現セブン&アイ・ホールディングス会長)は、米国で初めてコンビニの実態に接したとき、この現象にもっとも興味を持ったと言います。「お客さまは、廉価販売の店があるのを知りながら、なぜ定価で商品を買っていくのか」。
この疑問が解消したとき、あの有名なキャッチコピーが開発される下地ができたのではないでしょうか。
開いててよかった
このキャッチコピーは、「コンビニをひと言で」と聞かれて、とっさに答えた文句だと鈴木氏自身が述べています(日本経済新聞2007年4月19日朝刊)。
このひと言の中に、商品のよさを「可能な限り魅力的に」伝えるためのエッセンスが凝縮されています。
つまり、このキャッチコピーの中に、コンビニがお客さまに提供する大切な魅力が語られているのです。
早朝でも、深夜でも、買いたいときに、買いたいものが、買えます。
これが、いままでになかった小売店の革命的な魅力なのです。そして、このキャッチコピーが進化して、次のキャッチコピーが生まれていったのです。
開いててよかった。
♪セブン・イレブン、いい気分♪

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